マルマルナビでは、これまで、さまざま見どころを巡る高槻の散策コースをご紹介してきましたが、今月から、各スポットに気軽に訪ねてもらえるように、ひとつのスポットまわりをもう少し詳しくご紹介するレポート記事を書いていきます。題して、たかつき散歩。第1弾は、高槻南部・西面(さいめ)地区にある「玉川(たまがわ)の里」をご案内します。
玉川は、その昔(16世紀頃まで)高槻の南北を流れる芥川と合流していた川で、水量が豊かな川(摂津国三島の玉川)として六玉川(むたまがわ)のひとつに数えられた景勝地でした。卯の花(うのはな)や月の名所として知られ、日本最古の歌集・万葉集(まんようしゅう)をはじめ、新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)、千載和歌集(せんざいわかしゅう)などの歌集には、この地の自然を詠んだ和歌が登場します。
ただ、江戸時代にはじまる治水工事によって、川の形が変わったこともあり、現在の地図には玉川という川の名前は見られません。ですが、現在もこの地には川が流れ、約300本の卯の花が群生。この地の卯の花は、古歌で「卯の花の玉川」と詠まれるほど名所だったことにちなんで、高槻市では1976年(昭和42年)に「卯の花」を市民の花に選定しています。
「玉川の里」は、玉川橋団地の横を流れる川沿いにあり、JR高槻駅、阪急高槻市駅から市バスで行くことができます※。
※市バスの時刻表など詳細は、文末にあるご案内を参照ください。
バス停「玉川橋団地」からすぐ近くの橋の手前にある石碑(上写真の赤枠/下写真)が「玉川の里」の目印。そして、その左手にある遊歩道を100メートルほど進むと、約300本のウツギ(ウツギの花=卯の花)が群生しています。
ちなみに、卯の花は5月中旬から6月にかけて開花する花で、先月下旬に訪れたときには、ちょうどたくさんの卯の花が見られました。
卯の花は、南北海道から九州まで全国の山野に自生し、とりわけ珍しい花というわけではないようですが、筆者が滞在した小一時間のあいだに、卯の花を目当てに来ている人を何人もお見かけしたので、玉川の里は花好きの方々、四季を楽しみたい方にはちょっとした有名スポットなのでしょう。この記事を公開する頃には見頃は過ぎているのですが、気になった方はぜひ、来年以降、5月中旬~6月に実際に訪ねていただけるとうれしいです。
ところで、卯の花のことを調べるうちに知ったのですが、旧暦の4月(新暦では5月下旬から6月上旬頃)の異名「卯月(うづき)」は、卯の花が由来(そのため、卯の花月ともいわれたそうです)。また、初夏の情景を描いた童謡『夏は来ぬ』の歌詞には「う~のはな~の 匂う垣根に♪」とあるのがわかり、卯の花がいかに初夏の風物詩として人々に親しまれていたかをあらためて感じました。(『夏は来ぬ』がどんな曲だったかな…という方は、ぜひYouTubeなどで調べてみてくださいね。)
かの松尾芭蕉も「卯の花や暗き柳のおよびごし※」という句を残しており、玉川の里の小道にはその句碑があります。
※俳句の意:卯の花は夜目にも白く咲いている。柳は暗い中だとくねって腰をひねっているように見える。(卯の花、柳の姿を擬人化し対比した一句。)
句碑はかなり浸食が進んでいますが、それもそのはず、手前のプレートには、1843年(天保14年)の松尾芭蕉150回忌の際、近隣の有志によって刻まれたと書かれており、かつてこの地域に住んでいた人々がいかにこの句を大切にしていたのかが窺えました。
「玉川の里」への行き方
JR高槻駅(南口)または阪急高槻市駅より市営バスをご利用ください。
◯最寄りのバス停①「玉川橋団地」(玉川の里まで徒歩1分)
JR高槻駅南口4番乗り場、または阪急高槻市駅4番乗り場
19系統「玉川橋団地(竹の内小学校前経由)」行き(乗車時間:約30分)
「玉川橋団地」下車、玉川の里まで徒歩約1分
※便数が少ないため(平日1日7本、週末5本)高槻市営バスの時刻表(JR高槻駅南口/阪急高槻市駅)をご確認ください。
◯最寄りのバス停②「唐崎西口」(玉川の里まで徒歩約15分)
JR高槻駅南口 2番乗り場、または阪急高槻市駅2番乗り場
22・23系統「柱本団地」行き(乗車時間:約20分)
「唐崎西口」下車、玉川の里・遊歩道入口まで徒歩約15分
※高槻市営バスの時刻表(JR高槻駅南口/阪急高槻市駅)をご確認ください。